皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
さっきのカルム団長の態度を思えば、冷たい牢獄にでも入れられるのかと思っていたけれど――どうやら痛めつけられることはなさそうだ。
⋯⋯とはいえ、気を抜くことはできない。
もう昔の優しいルイナードは、いないんだから⋯⋯。
毛布はソファの上へと畳み、ぐるりと見回す。
壁には歴代の皇帝の肖像画が並び、大剣や短剣などといったコレクションが吊り下げられている。興味を惹かれた私は、それらに歩み寄り、しばし物色するように部屋の中を動いていた。
「おい、お呼びだ。いくぞ」
数分後、腰元に大きな剣をぶら下げたカルム団長が戻ると、そのまま謁見の間へととおされた。
私は処刑場へ赴くような気分で、ふらりとソファからたちあがり、仕方なく重層なその扉を彼のあとに続いてくぐる。
ここまで来て、さすがに逃げられるとは思っていない。部屋の外にも数名の騎士が張り付いていて、とても逃げ出せる状況では無い。
鉛を飲んだような気持ちのまま足を動かし、まだ誰もいない玉座へつながるレッドカーペットの上で、膝をついて首を折る。
さっきと同様にこの部屋も温かい。なのに力を抜けば全身がガクガクと震えそうだ。
恐怖か、それとも緊張か。その正体は考えない。何より怖気づく姿など見せたくないから。カルム団長にも、あの男にも。
そう強く決意していたはずなのに―――。