皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】

彼の言うとおり、ルイナードは、誰よりも婚姻を望まれる立場であるというのに、他国の王女や良家の令嬢、誰一人候補を据え置かないどころか、ことごとく縁談を蹴っているという話は聞いていた。

とはいえ、まさかまだ数時間しか経っていないところ、ここまで準備が進んでいるなんて⋯⋯。

おそらく、私に密偵でもつけていたに違いない。

自然と眉間に力が入る。


「あなたの都合なんて知らないわ。了承するとでも思ってるの?」

「――了承? なにか勘違いしているようだがこれは頼んでいるのではない。――命令だ」


あまりの自分勝手さに、頭の中でプツンと途切れるような音がした。

この訳のわからない状況に、覆えることのない皇帝命令だなんて横暴すぎる。


「なんのつもり⋯⋯? あなたなら、女なら誰だって選び放題じゃない。舞踏会の日だって、華やかな令嬢がたくさんいた中、なんで私に声をかけてきたの?」

「――お前には関係のないことだろう」

「――あるわ! でなければこんなことにならなかった。ここに私を呼んだということは、あの日私だと知って声をかけてきたということよ」


怒り任せに、目の前のルイナードへと詰め寄る。
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