皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】

「ずっとあなたを憎んでいた。もう会いたくないと願って、これまで生きてきたの。なのに、なんで、こんなことをするの⋯⋯? これ以上私から何を奪うっていうの!」


信じ難いことの連続に、頭がついていかない。

子身ごもったかと思えば、その相手は二度と出会いたくないと願ってきた男で。それも、その相手と婚姻を結ぶことを強要されるだなんて⋯⋯。

夜をともに過ごした私にも非はあるけれども。あんまりだ。

彼は何を考えているの?

一気に捲し立てたところで、大きな手が私の両腕をつかむ。


「騒ぐな――。奪うつもりなどない」


俯いていた顔を上げると、そこには鬱陶しそうに顔を歪める彼。不機嫌そうな面持ちに、つい口を引き結ぶ。


「俺は、この先お前から何かを奪おうとは考えていない。あの夜も――お前だから抱いた」


それって――


「アイリスだとわかっていたから、共に過ごした。ただそれだけだ」


頭を鈍器で殴られたような衝撃だった。

――つまり彼は、自らを忌み嫌う私へ『嫌がらせ』をしたかったということだ。

私を傷つけたかっただけなんだ。
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