皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
「――さきほど退室を命じたはずだが」
「しかし――」
「これは俺たちの問題だ ――去れ」
底冷えする声が謁見の間を貫く。私までゾクリと背筋が震え上がった。
苦虫を噛み潰したような顔をしたカルム団長は、仕方なく剣を鞘に収めそのまま部屋を去っていく。
た、助かったらしい⋯⋯。
カルム団長の背中を見送ったあと、思わずその場に崩れ落ちそうになった私は、壁に体重を預ける。
「⋯⋯どうした?」
「なんでもないわ」
しかし、すぐさま異変を察したルイナードはズンズンこちらに近づき、掬い上げるように私の身体を軽々と抱き上げてしまう。
恐怖心から動揺一色になった私は、目を白黒させた。
「ちょっと⋯⋯離して!!」
「足が震えている。こんなときまで強がるな」
「――」
見破られて、ぐっと押し黙る。刃を向けた相手に助けられるなんて、とても情けない。
しかし、カルム団長に突き付けられた刃と喉元の距離はわずか数ミリ。大きく息をすれば刺さるほどの至近距離だった。思い出そうとするだけで、足がガクガク震え未だに言うことを聞かない。
「全く⋯⋯何か所持してるとは思っていたが、あそこで仕掛けてくるとは思わなかった。その身体で刃物を隠し持つのは危険だろう」