皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
ルイナードは、呆れた口調ながらも、丁寧な所作で私を椅子の上へ、そぉっと座らせる。
温かい腕に優しい力加減。ふと昔を思い返してしまいそうになりつつも、慌てて留める。
さらに、そこが玉座であることに気づいた途端頭の中が真っ白となる。
「ちょ、ちょっと、ここ」と慌てて退けようとしたところ「いいから」と肩を押されてされて制されてしまう。
立てない私は大人しくしているしかない。
頭の中が、困惑でいっぱいだ。
なぜ、命令に逆らおうとした私をかばうの?
あなたは、何を考えているの?
「――なんだ?」
どうやら視線に気づいたらしい。玉座の前で膝をついた彼は私と視線の高さを合わせる。
無表情の彼は、巧妙な美麗な人形のようにも見える
「一体、あなたはなにを考えているの⋯⋯?」
懐妊を知ると同時にここまで呼び寄せ。顔を合わせたかと思えば婚姻に世継ぎ。そして、責め苛むために婚姻を結ぶのかと思えば、わけのわからない優しさを見せる。
一気にルイナードの考えていることがわからくなってしまった。
そんな思いで彼の視線の動きを追っていると。
彼はスッと大理石の床に転がる短剣をその瞳に映し――それからひとしきり少し考えるような素振りを見せたあと、再びこちらに視線を戻した。
やがて、口元に微かな笑みをのせた彼は、思わぬことを提案した。
「お前がこの城で皇妃として役割を果たすのであれば『俺を殺す権利を与えてやる』」