皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
聞き間違いだろうか。
あまりにも不穏なワードにドキリしてそのまま聞く体勢に徹する。
「殺す権利⋯⋯?」
ルイナードは頷いたあと、まるで他人事のように詳細を連ねていく。
「――あぁ。つまり、お前が俺を殺しても罪に問われない配慮をしてやる。もちろん寝込みを襲うことも、病に伏せているときも許可しよう。この城の中であれば、好きなときに斬りかかって構わない。」
衝撃的な内容に絶句だ。
「その代わりと言ってはなんだが――俺がお前を口説くことと、子供を産むことは了承してもらう」
「――く、口説く?!」
さらに提示された交換条件に慌てふためく。
「命を張るんだ、そのくらいはいいだろう」
なんてあっさり返された主張に、私の頭の中は嵐に見舞われてしまう。
出産はわかる。命はとても大切なことだ。
しかし口説くって⋯⋯それは彼にとってのメリットとは到底思えないのだけれど――。
「ふざけてるの?」
疑い深く覗き込むと、瞬時に不服そうな面持ちに変化させた彼は、サラリと黒髪を揺らし背を向けてしまう。
「ふざけてなどいない。俺が命をかけるんだ。お前もそのくらいの譲歩は必要というものだろう」
そのまま足を動かし、部屋の端に転がっていた短剣を手にすると再び玉座へと戻ってきた。
「――まぁ、殺せるのかは別の話だが」
うっすらと楽しげな表情で、短剣を差し出す。
真意が定かでない私は、それらを交互に見比べた。