皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
「⋯⋯何を言っているのか自分でわかってるの?」
「――それはこれからお前の手で確かめてみたらどうだ? さっきだって意気込んでいただろう」
暴挙を思い返し、ゔっと押し黙る。
“振り回して逃げようとした”と訂正するのも、なんとなく負けたような気がして悔しい。とはいえ、恨みを晴らすために人を殺めれば、私もこの男と同類となってしまう。
『――気に食わないから⋯⋯ジャドレを殺した』
ただ一言、あの日に彼が口にした理由を思い返す。
それだけは絶対に嫌だ。
だからもっと別な方法を――
「受け取らないならそれでもいい。素直になるのであれば――あの夜のように思う存分愛してやっても構わない――」
あ、愛――?!
植え付けられた生々しい記憶は、すんなりと顔を出した。
熱い吐息。掠れた声。熱く絡みつくふたりの身体。
咄嗟に、立ち上がった私は、気づけば短剣を奪い取っていた。
「――やるわよ。⋯⋯やらないなんて言ってないでしょう! バカなことを言わないでちょうだい」
前言撤回だ。人のことを心底バカにしている、最低なこの男を、絶対に痛い目に遭わせてやる。
意に反して、心臓がばくばくと音を立てているのは、見ないふりだ。
でも。そこで、ハッと気づいてしまった。
これを引き受けたということは、彼との婚姻を了承したということじゃないだろうか⋯⋯?