皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】

サーッと顔面蒼白になっていると、ルイナードはこちらを見ながらニヤニヤと口元を緩めている。


「お手並み拝見⋯⋯といくか」


最悪だ。彼は昔から私の扱いを心得ている上に、一枚上手。敵としては手強すぎる⋯⋯。


でも、やるからには、負けないんだから。


私は意を決して、短剣をルイナードへ差し向けて宣言する。


「――皇帝陛下」


もう、逃げることはできない。


いえ。もう逃げることは、絶対にしないの。


「――私は、必ずあなたを殺害いたします」


この男と婚姻を結び、お父さまを手に掛けたこの男を、私の手で復讐してやる。


これは――私の中の誓い。


はっきりと言い切ると、ルイナードは面白そうに「ほぅ」と、その完全無欠の美貌にニヒルな笑みを乗せた。

まるで、私を決心を見定めるみたいに。


「⋯⋯それはそれは、気をつけなければいけないな。やられる前に全力で口説いて⋯⋯手懐けねばならない」

「バカにしていられるのも、今のうちよ」


売り言葉に買い言葉は昔からだ。けれどもそこに、昔のような“愛”は無い。

この男の目的は世継ぎと、私への嫌がらせ。ただそれだけ。

『皇妃』という檻の中から出るためにも、この駆け引きに乗るしかない。



「ルイナード陛下」


そこへ、扉からおずおずと顔を出した男性の声が、ふたりの会話を遮る。

サッと視線を配った彼は「今行く」と返事を投げ、くるりとこちらに顔を向けた。


「――まぁ、なにをしても構わないが、怪我のないよう過ごせ。身体も冷やすな」

「⋯⋯わっ」
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