皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
「もしかして⋯⋯クロードさんて」
「覚えていられたようで嬉しい限りです。とりあえず、昔話でもしながらお部屋までご案内いたしましょう」
「お部屋⋯⋯?」
「本日からアイリス様の住まいはこちらとなります。ご心配なく、レイニーにはさきほどカルムが、サザンメリーには明朝わたしくから伝えますので」
信じがたい現実が一気に押し寄せた。
クロードさんは柔和な笑みを刻みながら、青ざめる私を、お構いなしに連れだしていくのだった。
クロードさんと初めて出会ったのは、私がまだ城にやってきたばかりの5歳の頃だった。その時の彼はまだ、騎士団長として団員を指導する、厳しくも優しいリーダーという存在だったと思う。
しかし、口達者で言うことを聞かない私は、よくお父さまと喧嘩をして部屋を飛びだすことも多く。父と仲の良いクロードさんは、ルイナードがいないときによく迎えに来てくれた――
『アイリスさま――やっぱり花壇の前にいましたか。早く帰りましょう』
見た目は熊みたいでとっても怖そうなのに、誰よりも心の暖かいクロードさんは、私だけではなくみんなから頼りにされる存在だった。
そして、あの事件の日。
私を救ってくれた、命の恩人でもある―――。