秘密の子育てだったのに、極上御曹司の溺愛から逃れられない
「ママ、もうどうぶつさんがいるよ!」

 入場ゲートをくぐってすぐ、入場客を出迎えするように設置された止まり木に止まっていたフクロウを目にした恵麻が、興奮した様子で駆け出す。

「恵麻、待って。走ると危ないから」

 開場したばかりで広場はまだ人が多く、見失わないように私も急いで追いかける。しかし、恵麻はフクロウのもとへたどり着く前につんのめった。

 あっ……!

 私は必死に手を伸ばすが届かない。間に合わない、と思わず顔をゆがめるけれど、顔から地面に転倒しそうだった恵麻を、相良さんの腕がすんでのところで受け止めてくれた。

 私は心底ほっとして、ふたりに駆け寄る。

 しゃがみ込んで恵麻の両方の肩に手を置く相良さんが、心配そうにその顔を覗き込んでいた。

「ケガはない?」

 尋ねる相良さんに、恵麻は眉をハの字にして「うん。だいじょうぶ」とうなずく。

 私も相良さんの横で膝を折った。
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