秘密の子育てだったのに、極上御曹司の溺愛から逃れられない
 出会ったときも、相良さんは見ず知らずの私を助けてくれた。

 相良さんはひと目見て君に惹かれて声をかけたと言ってくれたけれど、私だってあの瞬間から彼に心を奪われていた。

 そうでなければ、身体を重ねたりなんてできない。

 しかし、相良さんは私とは違う世界の人で、もともとは交わることがなかったのだ。

 そんな彼と幸せなひとときを過ごし、子供まで授かった。好きな人と自分の子供が、恵麻がいればそれだけで十分すぎるほど幸せだと思っていたのに。

 私は震える手で相良さんのコートの袖をそっと掴む。彼は一瞬驚いたように目を見張っていたけれど、すぐに筋肉が自然と緩んだ美しい笑みを浮かべた。

 その表情に、私は高鳴る心臓の音が自分でもはっきりと聞き取れる。
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