秘密の子育てだったのに、極上御曹司の溺愛から逃れられない

「またさんにんででかけたいね。そうだ。きょうはやまとさんにどうぶつえんありがとうしたいから、やまとさんがかえってきたら、えま、きのうのえをかく！」

　以前相良さんと恵麻がふたりでお絵かきをしていたとき、恵麻が相良さんの絵を描いたのを、彼はとても喜んでいた。それを覚えていたのだろう。はにかみながら言う恵麻が、ふふっと思いを巡らせて笑みを溢れさせる。

「きっと、また喜んでくれるね」

　私が言うと、恵麻は「うん！」といっそう笑みを深くした。

　この笑顔を守りたいと思っているのに、もうすぐ相良さんに会えなくなると告げたら恵麻はとても悲しむだろうな。

　私たちは再び歩き出す。

「やまとさんがパパだったらいいのに」

　恵麻が無邪気につぶやいた。胸の奥がズキッと痛むのを感じる。

　申し訳なさに、私はなにも言葉が出なかった。