秘密の子育てだったのに、極上御曹司の溺愛から逃れられない

 ――大和side

 家に帰って食事を済ませ、自室で軽く仕事をしていた俺は、唐突に手を止めて雑に頭を掻きむしった。

 集中できず椅子の背もたれに深く身体を預け、大きく息をつく。

 動物園に行って天音に想いを伝えてから、約一週間が経っていた。

 あれから天音は、恵麻ちゃんの前ではできるだけ今までと変わりないように接してくれていたけれど、以前より確実に俺と線引きをしていた。

『最近運動不足なので』と朝一緒に車で通勤もしなくなったし、家にいて話をしていても、彼女が心を閉ざしているのが感じ取れた。それなのに変わらず家事は完璧にこなしてくれていて、彼女の義理堅さというか、そのひたむきさに余計に侘しくなった。

 ここで一緒に過ごすようになって、俺は心のどこかで、天音も同じ気持ちでいてくれているのではないかと思っていた。

 上手くは言えないが、彼女が俺に向ける表情や視線。仕草から、なんとなくそんな気がしていた。
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