秘密の子育てだったのに、極上御曹司の溺愛から逃れられない
 この前行った動物園でも、初めて天音から触れてくれて本当に嬉しかった。彼女も求めてくれているのだと堪らなく愛おしくなり、つい手を取ってしまうほど。

 三人で写真まで撮ろうと言ってくれて、間違いなく距離が縮まっていると感じていたのに……。

 俺は立ち上がり、自室から出てリビングへと向かった。

 先ほどまでは恵麻ちゃんの声が微かに俺の部屋まで届いていたけれど、今はふたりの姿はない。そろそろ恵麻ちゃんを寝かしつけている時間だな。

 そう一瞬にして理解できるくらいには、彼女たちがすでに俺の生活の一部になっていた。

 俺はキッチンで冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出すと、それを手にダイニングへ行き、ペットボトルのフタを開けた。中身をコップにそそがずにそのまま流し込む。

 喉の渇きは潤っていくのに、心は焦げつくように乾いていた。
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