秘密の子育てだったのに、極上御曹司の溺愛から逃れられない
俺はマンションを出て車を飛ばし、神田がいる『相和グループ』の本社へ向かっていた。
『ポピーウィズ株式会社』の本社ビルからそれほど離れていない場所にかまえる『相和グループ』の本社は、俺も今までに仕事で何度も足を運んでいた。
離れたところからでもひと目でわかる高層ビル。月明かりに照らされたビルの上辺りだけが鈍く輝いていた。
俺は車で地下の社員駐車場へと入り、ゲートに設置された機械にセキュリティカードをかざす。グループの上層部やグループと関わり合いが深い一部の人間にしか配られていない特別なもので、これがあればグループの関連企業には社員証がなくても入れる。
まもなく二十二時を迎えようとしていることもあり、駐車場に車はほとんど停まっていなかった。
俺は車から降りる。俺がここへ来るのを予測していたように待ちかまえていた人影が、ゆらりと近づいてきた。
「お疲れ様でございます」
いつも無機質な笑顔を浮かべていた神田が、今日は無表情のままこちらに一礼する。