秘密の子育てだったのに、極上御曹司の溺愛から逃れられない
「説明しろ、神田。お前、彼女になにをした」

 俺の押し殺すような低い声が、コンクリートの壁や天井に跳ね返って響いた。それは静まり返ったその場所でしつこく耳にまとわりつき、俺の不快感をじわじわ煽る。

「ご忠告させていただきました。グループのため、社長のため、大和様には相応しいお相手をと思っておりましたので」

 神田は、悪びれる様子もなく放った。その勝手な言い草に、俺は感じたことのない怒りでこめかみが震えるのを感じる。

「……相応(ふさわ)しいだと? 彼女が相応しくないと、なにも知らないお前が勝手に決めるな!」

「たった一夜をともにしただけの相手でしょう。次期社長のあなたがそんな相手と子を成して結婚などと広まったら、グループの名前に傷がつきます。それに社長の――」

「ちょっと待て」

 さらなる衝撃が頭を突き抜け、俺は神田の言葉を遮った。嫌な予感が冷たく背筋を流れる。
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