秘密の子育てだったのに、極上御曹司の溺愛から逃れられない
 思案に暮れると不安は深まるばかりで、私はテーブルに肘をつき、両手で顔を覆う。

 とりあえず帰りを待っていよう。

 必死に気分を落ち着かせようとするけれど、視界を塞ぐと余計に相良さんで頭がいっぱいになった。

 本当は、私も彼に話さないといけないことがあった。

 先日仕事の休憩中に不動産屋に行き、ネットで目星をつけていた物件の内見へ行った。それほど時間がなかったのでゆっくりは見られなかったが、とくに悪い点はなく、契約すればすぐにでも引っ越しが可能な物件だった。

 あとは契約を交わすだけ。それで、仕事に関しても栗林さんに相談しないといけない。だからもうすぐここを出ていくと言わないと……。

 相良さんの気持ちを拒んだ日から、何度も覚悟を決めたはずだった。

 それなのに、いくら突き放してもまっすぐに想いを伝えてくれる相良さんに、私はそれを伝えられないでいた。
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