秘密の子育てだったのに、極上御曹司の溺愛から逃れられない
「ママは?」

 突然の質問に、私は「えっ?」と一驚する。

「パパのことすきじゃない?」

「そ、そんなわけないけど……」

「好きじゃないの?」

 狼狽している私へ、大和さんも問いかける。

「大和さんまで……」

 目に期待を滲ませるふたりの眼差しに耐え切れなくなり、私は恵麻ごと大和さんを抱きしめた。

「恵麻も、大和さんも、ふたりとも大好き」

 精いっぱいの想いを込めて伝える。腕の中から恵麻のはしゃぐ声が聞こえ、大和さんは私の頭を包み込むように抱き寄せた。

 大和さんに出会って、すれ違い、ひとりで泣きたくなる夜もあった。でも、出会わなければ、恵麻も、この涙が出そうなくらいの幸せも手にできなかった。

 失った時間は戻らないけれど、まだ間に合う。今から刻まれる時間は、私たちにとってかけがえのないものになるだろう。これから家族でひとつずつ積み重ねて、いつか恵麻が家を出て大和さんとふたりになったときに、語り切れないほどの思い出ができていますように。

 想像するだけで、未来は晴れやかだった。

 もうなにがあってもこの手を離さない。大和さんが言ってくれたように、私もこの幸せをなにがあっても守ると心に誓った。

 あの夜の続きを、今日も。そして、これからもずっと。




                  fin.
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