秘密の子育てだったのに、極上御曹司の溺愛から逃れられない
番外編
 日増しに春の色が濃くなる二月中旬。

 吹きつける心地よい温かな風に、私のアイボリーのロングプリーツワンピースの裾がひらひらと舞った。

 今日は白のトップスに黒のテーパードパンツ姿の大和さんがインターホンを押して、応対してくれた女性に「大和です」と告げる。

 持ってきた手土産の紙袋を手に提げた私は、個人住宅だとは思えない風格のある大きな屋敷を前に、緊張から固い面持ちで大和さんの隣に並んでいた。

 足もとへ視線を落とすと、今日のおでかけをとても楽しみにしていた恵麻は、心が浮き立った様子でそわそわとしている。

 すると、小さな物音がして、玄関の格子戸が開いた。中から現れたスタイルの良いショートカットの綺麗な女性が、私の姿を認めて驚いたように目を白黒させる。

 挨拶をしようと口を開いた私が言葉を発する前に、「わー!」とはつらつとした声を上げたショートカットの女性が私に飛びついてきた。
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