秘密の子育てだったのに、極上御曹司の溺愛から逃れられない
 とくに子育てをしている彼女の姿を見ているのが好きだった。

 恵麻ちゃんといる彼女はいつも自然体で笑っていて、慈愛に満ちた眼差しで恵麻ちゃんを見守っている。

 天音が怒ったあと恵麻ちゃんがしょんぼりしていたら、恵麻ちゃんには気づかれないようにしていたけれど実は天音のほうが泣き出しそうな顔をしていた。

 恵麻ちゃんを心から大切に想っているのが、日々の中でひしひしと伝わってくる。

 俺がこの数日間の記憶をひとり思い返していると、バスルームへ向かったはずの天音が、いつのまにか湯呑みカップをふたつ乗せたトレーを持って立っていた。

「眠る前なのでお茶にしたんですけど、大丈夫でしたか?」

 気恥ずかしいままなのか、天音は伏し目がちに言う。

「ありがとう。いただくよ」

 そう言って、俺は天音の手からトレーを奪い、ソファーへと足を進める。俺がソファーに座りガラステーブルの上にカップを並べると、あとからやってきた彼女も少し距離を取って遠慮がちに隣へ腰掛けた。

 俺は熱いお茶を慎重にすする。優しい甘みにほっと安堵の息が漏れた。
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