初恋交響楽
2年前に近所に大型のショッピングモールができて、そこにスイーツの有名店が何件か入って、お客さんのほとんどはそっちに流れちゃって、店が潰れてしまうのは時間の問題…と言う展開である。

「それで、相手は誰なの?」

わたしは父親に聞いた。

結婚相手が親子ほど年齢が離れた人でも、知らない人でも文句は言わない。

「大国さんって言う人で…」

「えっ?」

その名前には心当たりがあった。

いや、まさか…ねえ?

でも“山田”や“田中”や“鈴木”みたいにどこにでもある身近な名前と言う訳ではない。

「孫の名前は…大国巡くんって言うそうだ」

そう答えた父親に、わたしは顔が引きつったのを感じた。

その名前の人物、めちゃくちゃ心当たりがあります…。

何だったら知っているくらいです…。

人違いであれと心の底から願ったが、
「この人だよ」

父親はお見合い写真をわたしに見せてきた。
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