初恋交響楽
「すみません、ちょっとお手洗いの方に行っても…」

「ああ、どうぞ」

大国くんが返事をしたのを確認すると、わたしは椅子から腰をあげてカフェを後にした。

トイレの前に到着して周りに誰もいないことを確認すると、
「何じゃい、あいつは！」
と、先ほどまでたまっていた感情を吐き出した。

「何が“結婚していなくてよかった”だ！

すみませんね、この年齢で独身で！

でも好きで独身でいた訳じゃないんですよ、バカヤローが！」

あーあ、もう本当にやってらんないったらありゃしない！

何が悲しくて中学時代の同級生と見合いをしなきゃいけないのよ！

「誰のせいでこの年齢まで彼氏がいなかったうえに独身だったんだっつーのよ！」

「へえ、それはそれは…」

わたし以外の声が聞こえたので驚いた。
< 8 / 100 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop