初恋交響楽
そこに現れたのは、メタルフレームの眼鏡をかけたスーツ姿の男だった。

「だ、誰ですか…?」

思わず声をかけたわたしに、
「これは失礼しました。

大国巡副社長の秘書をしております、寺島と申します」

彼ーー寺島さんは丁寧に自己紹介をすると、ペコリと頭を下げた。

「ひ、秘書ですか…」

ヤバいな、とんでもないところを見られたな…。

どこから聞いていたのかはわからないけれど、いろいろと聞かれただろうな…。

「副社長とのお見合いに不満を抱いているみたいですね」

「そ、そうですね…」

隠してもごまかしても無理だな、これは。

「実は彼ーー大国くんとは中学時代の同級生で、ちょっと因縁的なものがありまして…」

ブツブツと独り言のように言ったわたしに、
「なるほど」
と、寺島さんは言った。
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