Crush～いつも君を想う～
当日、私は成人式以来５年ぶりとなる振り袖に身を包んでいた。

昨日から千世ちゃんと入れ替わった訳なんだけど、誰も私たちが入れ替わったことに気づかなかった。

振り袖の着つけをしていたらさすがに気づくかなと思ったかれど、それでも気づかれなかった。

本当に私と千世ちゃんはよく似ているんだなと思った。

場所は懐石料理が美味しいと有名な料亭で、その一室で私は見合い相手である『ながはま屋』の主人である長濱林太郎がくるのを待っていた。

「失礼します」

テナーの声が聞こえたかと思ったら、ガラッと目の前のふすまが開かれた。

そこに現れたのは、和服に身を包んだ長身の男の人だった。

１度もカラーリングをしたことがないであろうツヤのある美しい黒髪に、目鼻立ちが整った端正なその顔立ちはまるで俳優のようだ。
< 11 / 200 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop