Crush~いつも君を想う~
第5章*結婚時代

5-1*一大決心

それまで冷たい風が吹いていた日々もだんだんと温かくなり、花も少しずつ咲くようになってきた日のことだった。

私と林太郎さんは電車に揺られて、ある場所へと向かっていた。

それまでビルや住宅街などの都会的な風景を映し出していた窓も、田んぼや山などの自然があふれる風景を映し出すようになった。

「林太郎さん」

私の向かい側に腰を下ろして外の景色を眺めている彼に向かって、私は声をかけた。

「何?」

そう聞いてきた林太郎さんに、
「無理だと思ったら言っていいからね?」
と、私は言った。

林太郎さんは微笑んで首を横に振った。

その微笑みがいつもよりもぎこちなく感じたのは、私の気のせいだと思う。

「ここまできたから、もう大丈夫だよ」

林太郎さんはそう言った。
< 130 / 200 >

この作品をシェア

pagetop