Crush~いつも君を想う~
テレビは、ヒロインが息子を出産したシーンを映していた。

夫になった彼と彼の家族、友人たちに祝福されたヒロインは、自分はこんなにも温かい人たちに恵まれていたことと自分だけの家族を持ったことの喜びを噛み締めて映画は終わる。

「一果さん」

映画が終わると、林太郎さんが名前を呼んだ。

「何?」

私が聞き返すと、
「ーー俺、産みの母に会うよ」
と、林太郎さんが言った。

さっきまでの浮かない様子はなくなっていた。

「この映画が公開された時に見に行って思い出したんだ。

自分が家族を欲しいって思ったのは、この映画を見たのがきっかけだったんだって」

「そうだったの?」

私の問いかけに、林太郎さんは首を縦に振ってうなずいた。
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