Crush~いつも君を想う~
「それまで花街の片隅で営業していたのに、いきなり大きな舞台で営業することになって…本当に不安だったんですよね。

準備も片付けも大変ですし、面倒ですし」

「ああ、そっちなのね…」

と言うか、林太郎さんも大変だとか面倒だと思う時もあるんだな。

「だけど、今はやってよかったと思ってるよ」

「そうか」

私が返事をしたのと同時に、林太郎さんが手を差し出してきた。

それに対して私は自分の手を重ねると、彼の手を繋いだ。

いつも思うけれど、本当に大きな手だな。

節くれ立っている男らしいその手に、私はフフッと笑った。

「どうした?」

そう聞いてきた林太郎さんに、
「ううん、何でもない」

私は首を横に振って答えた。
< 72 / 200 >

この作品をシェア

pagetop