忘愛症候群


「お隣から美味しいチョコレートもらったのにあげないわよ?」

「食べたい」



どうやらそんなこともないらしい。


ケンとトモカから貰ったケーキと、お隣から貰ったというベルギーチョコを綺麗に平らげた。



お腹を十分に満たしたし、幸せ。申し分なく美味しかった。


特にベルギーチョコ、あれは何個食べても飽きない美味しさだし毎日でも食べたい。



言い過ぎ?そんなことはない、それほど美味しかったんだから。



食べ終えたあたしは、麦茶をごくごく飲みほしていたらお母さんが近づいてきた。




「愛」

「何?」

「ケーキも買ったの?」

「あー…あれはクラスメイトに貰った。明日16歳の誕生日だから」

「ちゃんとお礼言った?」

「言ったよ。あたしを何だと思ってるの」



“礼儀のなってない娘”と返されたときは一瞬殺意がわいた。


娘なのに、アンタの娘なのになんてことを言うんだろう。

でもお母さんは嘘よ嘘、と言ったので冗談だということは分かった。




「で、明日は一真くんとデート?」

「ブブッ…!」

「ちょっと、汚い!」




何で知ってんのよ!

少し吹いた麦茶を手の甲で拭うと、お母さんを睨みつけるように見た。


デートするのを知ってる理由は、一真から娘さんを1日借り増すという断りのメールが届いたらしい。



一真、そんなことメールしなくていいって言ってんのに。



一真は律儀な人だから。

同い年だというのにしっかりしてるから、たまに本当に同い年かを疑ってしまう。



「デートはどこに行くの?」

「一真が知ってる」

「何時に来るの?」

「10時って言ってた」


10時に迎えに来るとは言ったけど、そこに行くかだけは教えてくれなかったなぁ。



どこに連れて言ってくれるんだろう?



一真、バイクの免許取ったから後ろ乗せてくれるって言うし。



___ドキドキ



一真の後ろに乗れるんだ。



___ドキドキ




一真の後ろに乗るのはあたしが初めて。



___ドキドキ




ヤバい、心臓五月蝿い。


あーもう、1年以上も付き合っててこんなにドキドキするなんて。



一真、一真。


一真好き、大好き。
一真___かずま…?



「一真…て誰?」


一真って…一真って…。


「あっ…」



一真はあたしの恋人じゃん。



「ちょっと、今あたしどうしたのよ」


< 11 / 83 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop