忘愛症候群
KAZUMAって…皆がしつこく言ってた人の名前。
あたしはその人と本当に付き合っていたの?
このアルバムを見れば分かること…。
あたしは少し震える手でそのアルバムに手を伸ばし、引き抜くとゆっくりと開いた。
「何、これ」
さっき見たかっこいい男の子とのツーショットの写真が沢山綴られている。
一緒にご飯を食べてる写真、笑いあってる写真、遊園地や水族館ではしゃいでる写真、一緒に片手を出しあってハートを作った写真。
いっぱい…いっぱい男の子との写真がある。
何回撮ったか分からないけどプリクラもある。
好き、大好き、愛してるとかいろんな言葉が書かれてて…しかもチュープリまである始末。
それを見てカァッと顔が赤くなった。
あ、あたしこんなカッコイイ人とキスなんてしたの?
やばい…すごい恥ずかしい。
自分の写真やプリクラななに顔を背けたくなる程、幸せオーラが漂ってる。
「あ……1年と2ヶ月も付き合ってたんだ」
思い出すことはないけどその字をそっと撫でる。
そういえばさっき、今日はデートだって言ってた。
10時に迎えに来るって。
ベッドの横に置いてある時計を見ればもう10時になりかけていた。
どうやらアルバムに見入ってしまって時間に全然気づかなかったみたい。
てことはもうこの家に来るってことだよね。
…パジャマのまま。
視線を下に下ろせばし猫柄のパジャマが視界に入り、流石に着替えようと思ってクローゼットを開けた。
パンツとワイシャツ、ピンクベージュのコートと黒の鞄を手にして下に降りたと同時にピンポーンと呼び鈴が鳴った。
「はーい」
「愛、おはよう」
玄関のドアを開ければふわっと笑った一真くんがいて、やっぱりカッコいいと思った。
身長も高いし言うことなしのイケメンである。
「ごめんなさい今日は__」
「愛!!」
一真くんに喋りかけたら誰かが遮って言いたいことが言えなかった。
「一真くん悪いけど今日のデートは中止だ。中に入りなさい」
と言ってあたしを家の中に引き戻し、一真くんを招き入れたのはお父さんだった。
お父さんは一体何をしようというのか。
黙ってその背中を追いかけてリビングに入ると皆着替えてソファーに腰を下ろして待っていた。