忘愛症候群
お昼休み中庭で、ケンとトモカも前で散々泣いて何故か二人も泣きだしてしまい、互いに慰め合っていた。
側から見れば異様な光景としか言えなかっただろう。
そんな昼休みも終えて、何とか気持ちを切り替えて午後の授業を受け終えた後、放課後俺はある場所へと向かった。
____________…
「やぁ、初めまして水島一真くん」
初めて会った目の前の人物は愛の病気の担当医。
「先生俺に治療法を教えてください」
「ダメだ」
「どうしてッ」
前置きなく単刀直入に訊けば即答された。
治療法がないわけじゃないのにどうして治さない、どうして教えようとしないんだ。
「君にとっても愛さんにとっても残酷な決断だからだ」
「……んだよ、それ」
残酷って…なんだよ。
「それでも…どうしても、教えて欲しいです」
お願いします、と深々と頭を下げる。
「それは本心かい?」
そんなの愚問でしかない。
「本心以外の何でもありません」
治療法が残酷だと言うなら___俺はそれを受け入れる。
「それじゃあ君だけには教えるが…」
“君だけ”?それって…。
「愛の母親たちには言ってないんですか?」
「そうだ。言わないんじゃない、言えないから伝えてないんだ」
それほどまでに…恐ろしい方法ということ。
俺は静かに唾を飲んだ。
「忘愛症候群は__…」
その残酷な治療法は。
「…え」
俺の全ての思考を停止させた。
【一真side end】