忘愛症候群


___________…



「愛は相変わらず可愛くてスタイルいいよね~」

「トモカ褒めても何も出ないからね」



何かほしいのかと思ってそう返したら「違うよ、そうじゃない!」と怒ってしまった。


本当に褒めてくれてたんだ。


あたしは12時にトモカの家に着いて、13時に間に合うように待ち合わせの駅前に向かうつもりである。


準備が少し遅いトモカは案の定準備が終わってなくて、メイク等は済んでいるものの服がどうしても決まらないらしい。



いや、前日に決めとけよって思うよね。

トモカはセンスがないわけじゃない、優柔不断なだけ。


だからあの服でもないこの服でもないと、決めかねて部屋が服でごった返して「どーしよぉ。助けてぇ〜」と泣きつきの電話が入ってくるわけ。



どうせ今日も決まってないだろうと思って来てみれば……部屋はたくさんの服で溢れかえっていた。

ため息がこぼれてしまう。



「あー…これとこれと、そっちのやつ。はい、終わり」

「はやっ!」



これ以上頭痛くなりたくないからね。

パパっと決めてしまったトモカの服。

文句は1つとて受け付けません。


だけど思った通り似合っているから、やっぱりあたしセンスいいと自画自賛していた。




「愛っ、時間ない!」




時計を見て焦った声を出したトモカだけど、時間が無くなったのはトモカのせいだからね?!と言ってやりたい。


急いで家を出て駅へと足を動かした。


息を切らして駅前についたのは4分前とギリギリセーフな時間。


ゼェゼェと二酸化炭素を吐き出し、思いっきり酸素を肺いっぱいに取り込むあたしたちの前に現れたのは___…



「ハハハッ、すげぇダッシュしてたな」



豪快に笑うケンと。



「疲れたでしょ。遅れてきてもよかったのに」



ケンとは違い、紳士な面を見せて冷たい飲み物を差し出してくれる一真くん。


ありがとうと礼をして、冷たい缶ジュースを受けとって口に含んで喉を潤した。


恥ずかしいし、まだちょっと厳しい部分もあるから目は合わせられないし自然と一定の距離感ができる。



「じゃあもう行こっか!水族館」



空気を読んで気を使って明るい声を出したトモカに助けられ、あたしたちは電車にユラユラ揺られて目的地を目指した。


水族館に着くとあたしよりも先にはしゃぐトモカ。



「ペンギン可愛い~」


ペンギンを愛でて。


「うわッ、こいつ怖っ」


深海魚にビビり。


「ラッコラッコ~」


ラッコにデレる。


トモカのリアクション芸のせいであたしの感想なんてゴミだゴミ。


トモカ&ケンのバカップルの少し後ろを歩くあたしとその隣を歩く一真くん。


何かを気にしているのか、確認するかのようにあたしをチラチラ見てくる。



「…何?」



気になって仕方ないあたしは我慢の限界で、訊いてしまった。



「いや、今日は特別可愛いから」

「なッ…!」




なんでそんなことをサラッと言っちゃうの!?

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