忘愛症候群
変化


8月26日。


季節の変わり目は心の変わり目___なんて言ってみたけど季節の変わり目どころか真夏まっただ中。


あっついあっつい、本当溶けてなくなりそうなくらい暑い。



そんな中、今日もアイスと冷たい飲み物を片手に残り少ない夏休みと宿題を見つめる。


これは決して暑くてやる気が出ないからサボってるんじゃなくて、アイスと飲み物で両手が塞がってるから仕方ないわけで。


___ていうのは、まぁ…言い訳に過ぎないんだけど。




「あと少しだしちゃっちゃと終わらせよ」




そう気合を入れなおしてアイスを平らげると、宿題と向き合ってノートの上にペンを走らせていった。


真っ白だったそれはどんどん黒くペンと同じ色に染まっていく。



1時間もしないうちに終えたそれは集中をすればすぐものだったのにもかかわらず、勉強を始めるまでダラダラしていたため合計2時間半もかかってしまった。


お母さんはきっとこの時間を無駄な時間というだろうな。


けど違うからね。

そうじゃないから、無駄って言わないの。




「時間を有意義に使ったって言ってほしいものだ」




そんな独り言は誰もいないリビングに響いては、セミの鳴く声でかき消されていった。



そう、今日は家族全員出かけてしまっていて家にはあたし1人。


お母さんは友人と食事へ。

お父さんは暑い中仕事へ。

お兄ちゃんは男友達と海へ。



ナンパをしに行ったのか、ただ海で遊びに行きたかったのか___だからって何が楽しくて女の子1人もいない中、男オンリーで海に行くのよ。


彼女と行ったらいいのに彼女と。


いや、だからその肝心の彼女がいないから悲しくてナンパにでも行こうと、彼女のいない男友達と海に行ってしまったのか。


あたしが言うのもなんだけど、うちのお兄ちゃん顔は悪くないからそれなりにモテるはずなんだけどなぁ。


…あぁ、アレか…アレだから彼女ができないとか?



「お兄ちゃん超がつくほど馬鹿だからな」



兄をちょっと馬鹿にしていたその時だった。


短く震えたそれはメールを知らせるもので、中身を確認してみれば___…




「げッ!」




馬鹿兄からのメールで、その内容が恐ろしかった。

“おい馬鹿妹。勉強しねぇと超がつくほどの大馬鹿になるぞ”


コイツはエスパーか何か?
タイミングが良すぎて鳥肌立ちまくり。




「返事返すのやめよ」




本当は「お兄ちゃんの方がやばいくらい馬鹿じゃん。海に行ってる場合じゃないんじゃん?」って送り返したいところだけど、ものすごい血相で帰ってきてはボコボコにされかねないからやめておいた。



そのかわり“残念。宿題はとうの昔に終えちゃいました~♡”て送ってあげた。




「さて、どうしようか」




宿題終え突然暇になってしまったから何をやろうかと迷ってしまう。


考えれば考えるほど何かをしようと思うのが面倒に…。


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