忘愛症候群
誓いと願い
27日…28日…29日とめくれていくカレンダー。
「夏休みも明日で終わりだね」
今日も朝から家に迎えに来て、駅までの道のりを一緒に歩く一真がそう言った。
夏休みも明日が最後か。
嬉しいし、嬉しくない。
あたしは明日まで一真のことを覚えたままで入れるだろうか。
そう思うくらい一真への想いが膨らんでいて今にも破裂しそう。
この想いが破裂してしまったら___…
「また、何もかも忘れてしまう」
苦くて苦しい思い出も、楽しい思い出も、笑いあったあの笑顔も___今にも溢れ出しそうなこの想いさえも。
全部、全部消えてなくなってしまう。
忘れたくないって思ってるのに。
覚えていたいって…できることなら今までの記憶もすべて思い出したいって思ってるのに。
この人生は、神は、病は___それを許さない。
「愛、何か言った?」
「んー?何も」
この人とずっといたいって願うのに。
「今日はどこに行くの?」
「秘密」
どれだけの代償を払えば叶えてくれますか?
「ケチ。教えてくれたっていいじゃん」
「教えたら意味がないから教えないんだって」
「……」
「着いてからのお楽しみ。な?」
着いてからじゃないと教えてくれる気はさらさらないらしく、あたしはトボトボ付いていくしかない。
一体どこに向かっているのやら。
向かう先の予想が全くつかないまま到着したのは。
「こ、ここ??」
___チャペルだった。
「なな、なんで?え、なん、なんで!?」
どもるわどもるわ、動揺・困惑してるのバレバレ。
「俺の母さんの姉がここのオーナーで、ホームページの写真を新しくしたいって言うもんだから俺が名乗り出たら“是非”って」
「是非って何!?あたし聞いてない!」
「うん、言ってないから」
「そうだよ!言われてないもん!」
「だから今言った。着いてからのお楽しみって言ったろ?」
「な…なっ…」
まんまと騙されたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
それから一真に引きずられるようにして中に入ってから1時間後。
あたしは生まれ変わっていた。