忘愛症候群
なにこれ、急に何が始まったの。
「俺が好きなのは君だけ」
言葉はすんなり入ってくるのに…脳がついていかない。
「君しか愛せない」
あたし今とんでもない告白を受けてる、よね。
こんな沢山人がいる前で。
「これからも俺と一緒に生きてほしい」
あぁ…涙が溢れ出て止められない、止まらない。
「っ…うぅ、っ…かず、ま」
どうして今そんなこと言うの。
「か、ずまぁっ…」
今そんなこと言われたら、
「あたし、もっ___す、きぃっ…」
___止めようと必死だった感情の歯止めが利かなくなる。
溢れてしまった。
認めてしまった。
伝えてしまった。
もう、そのままの記憶を保っていることは不可能なんだろう。
だったら今しかないじゃん。
今しか言えない。
今しか伝えられない。
記憶がある今のうちに、
「一真が好き、大好き」
この内に秘めえた想いを、
「…っ愛してる」
___全て、全て伝えたい。
あたしの全てをあげたい。
心も、体も、人生も…全部全部。
「………愛」
嬉しそうに、だけど悲しそうにあたしを引き寄せて抱きしめた一真の腕の中は温かい。
シャッターが切られる音が聞こえるような気がするけど、そんなの気にしてらんない。
一真に想いを伝えるのに精一杯。
「時間が、ない…からっ」
「愛…」
「いま、しかっ…言えないの___ごめんねっ」
「謝ってほしいわけじゃないっ」
___苦しくなってきた、頭痛もどんどん痛みを増してきてる。
痛い、苦しい、辛い、だけど忘れたくない、離れたくない。
傍にいたい。
「…っは、はぁ…はぁ…」
「愛?愛…!」
こんな苦しんでる姿見せたくなかったのにな。
「好きっ…好き、一真が___す、き」
どれだけ苦しくても、この気持ちは伝えたい。
分かってるはずだけど、忘れてしまう前に今まで溜め込んだ【好き】を伝えたい。
「俺も、俺も愛が好き。愛してるっ」
一真…嬉しい、けど照れるなぁこんな人前でそんなこと言われるの。
胸が痛い、頭も締め付けられてるみたい。
「一真…もう一度、あたしと恋しよ…」
こんなことを言うあたしは残酷だ。
そんな残酷な言葉を一真に言ってしまった。
でも、でもあたしだって。
「いやっ、やだよぉ…忘れたくないっ」
もう一真のことを忘れたくない、覚えていたい。
本音がついに零れた。
「俺だって…______れよ」
あたしの本音が零れたら、次は一真の番だった。
「___お願いだから、俺を忘れないでくれッ」
一真の悲痛な心の叫び声が聞こえたとき、あたしは意識を手放した。