忘愛症候群
最期


『ん…ぃた』



まだ頭痛の余韻が残ってる。



“あ、起きた?”


『え、誰?』


“誰って、あたしはあたしだよ。”



あたしはあたしって言われても…名前を言ってくれなきゃ分からないのに。



“名前なんて知る必要ないでしょ?”



知る必要がないって、意味が分からない。



『貴女はあたしの名前を知っているのに。不公平よ』


“じゃあ聞くけど、この世の中に公平なことなんてあったっけ?”


そう言われると、返す言葉がないのは事実だから。



『じゃあ貴女のことはもういいから、ここが何処なのか教えて』




目が覚めてずっと気になっていた。

真っ白な部屋___というより箱の中にいるような感じ。


外部との関係をシャットアウトされたような。

音もない、匂いもない、感触もない。

とても不思議、というより変な感じでしかない。




“ここはまだ夢の中”


『ここが夢?』


“んー…というより、貴女の意識の中って言えばいいかな”


『あたしの意識の中?』



待って、ますます意味が分からない。



『あたしの意識の中なら貴女はいないんじゃ?』



あたしの中に存在する(いる)ってことは一体どういう理屈?



“だから知らなくてもいいんだよ。”



彼女がそういうもんだからもう訊かないことにした。



“で、本題に入るんだけど”



どうやら彼女はあたしに話したいことがあるらしく、姿が見えず頭の中に話しかけてくる彼女に意識を向けた。



“彼のことは覚えてる?”

『彼?』

“そう…そうね。じゃあ忘れたくない?苦しみたくない?辛くなりたくない?”

『ねぇ!だからなんの話をしてるの!?』



彼女の言いたいことが分からなくてイライラする。

彼女は質問をするだけしておいて、あたしが答えずとも何故か解決しているみたいだから余計にイラつく。




“忘れたくないと言おうが、何と言おうが免れることができない運命だから、あたしが救うなんてできないけどね。”




彼女はそう言うと徐々に消えていくような感覚になった。

一方的に言うだけ言ってあたしには何も教えないの!?

一体何がしたかったの!



『貴女は誰っ…!?』



___あたしは“愛”…あなた自身だよ。

そう言われたような気がした。




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「んっ……ぃた」




ズキン___と頭に走った痛み。


完全に意識がはっきりしているわけじゃないけどベッドの上にいて、薬品の匂いとかがするからここはきっと病院なんだろうなって思う。


うん、あたしがいるのは個室だけど、これ完璧病院だ。


それにしても、



「なんで病院?」

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