忘愛症候群
_____________…
「あっぶな…!」
轢かれる___そう思ったのにギリギリで避けることができた。
実際あと少しでも遅れていたら完璧轢かれていた。
「君!大丈夫か!?」
そんな俺に通勤中でなんだろうおじさんが俺に声を掛けてくれた。
こんな暑いのにスーツとか大変そう。
「はい、大丈夫です」
すみません心配を掛けました、とおじさんに頭を下げると「顔を上げて」と慌てられた。
「それにしてもさっきの車危ないな。信号無視してたぞ」
「この子が足速くなかったら轢いていた」と怒ってくれている。
そしてらもう1人女の人が「大丈夫!?怪我してない?」と声を掛けてくれた。
「私も見てたの。あの車最低ね」
「ギリギリだったが怪我はないようですよ」
「そう、良かった」
おじさんは俺に怪我がないことを女の人に伝えると女の人は胸に手を当て安心した。
「ごめんね。ナンバー見ようと思ったんだけど、逃げるのが速くて見れなかったの」
「いえ、本当心配してありがとうございます」
2人は出勤前のようだったので本当に大丈夫だということを伝えて会社に向かってもらった。
分かれる最後まで「本当に大丈夫?」と心配をしてくれたから心から優しい2人なんだと、俺がほっこりさせられた。
俺はまだその場にいて駅に向かうおじさんの後ろ姿を見送る。
おじさんはまだ俺の心配をしているのかたまに後ろを振り返って俺を確認するから思わず笑ってしまった。
そろそろ姿が見えなくなろうとした時、おじさんは最後にもう一度振り返ったので俺は頭を下げて小さく手を振った___けど、おじさんが手を振り返してくれることはなく何故焦った様子で俺のところに走ってきた。
あんなに焦った顔してどうしたんだ??
それに何か言ってる?
おじさんの口は動いているものの少し距離があるため聞き取りずらかった。
だからおじさんに向けて言ったんだ。
「なんですかー?」
そう訊いた俺の問いに返ってきたのは…
「逃げろッ!!!」
___俺が聞いたのはその言葉が最後だった。
【一真side end】