忘愛症候群


先生とのよく意味が分からない話が終わり、先生が病室を出て行った後だった、“ズキン”と頭に痛みが走ったのは。



「いたっ」



きっとそれが引き金だったんだろう。



「___ッ!ぃたぁッ!!」



次の瞬間には意識を失うんじゃないかとくらいの痛みに襲われた。



「あぁぁぁッ!!」



痛い痛い痛い痛いッ!!

頭が割れるような痛みで耐えられずベッドで上で頭を抱えて蹲る。


あたしの叫び声が聞こえたのかナースコールを押していないのに「渡辺さん!?どうされたんですか!」と焦った声を出しながら看護士が入ってきた。




「たすッ…たす、け…て___うぅぅあぁッ!!」

「渡辺さん!渡辺さんしっかり!今先生が来ますから!」

「痛いッ…あ、たまがぁ___イタイイタイ!!」




先生が来てくれるの?
ねぇ本当に来るの?


頭が痛い、割れるように痛い、焼けるように痛い、溶けるように痛い。




「愛さん!?」

「せ、先生!渡辺さんが!!」

「___…」




先生、助けてッ___!


そう口にしようとした言葉は発することができず、あたしの意識は切り離されようとしていた。


意識が切れようとする中頭の中に何かが流れ始め、あたしは何故かそれを必死に見ようと追いかけた。


___だ、れ?



頭の中に流れ込んできたのは知らない男性。
でも何故だかよく一緒にいる。


幸せそうに笑ったり、幸せな雰囲気が漂っているのに___途中から彼の表情が悲しく、絶望に満ちたものに変わった。



ショックで驚きを隠せないような顔。


病院に行っては先生に“忘愛症候群”と診断され。


彼をまた好きになろうとして__忘れ。


再び絶望した彼を待っていたのは“拒絶”。


さらに絶望した彼だけど、毎日手紙を送るようになるがあたしはそれを一通として読もうとしない。



だけど、トモカの言葉で会うことを決め___再び惹かれた。


そんなあたしを待っていたのはまた“忘れる”こと。


また忘れてしまうのだと感じ取ってしまったあたしは想いを認めたうえに、苦しみに耐えながら彼に想いを伝えた。



あぁ、なんでそんな顔するの。


そんな顔をしてほしくて「好き」って言ったわけじゃないのに。


喜んでほしくて言った言葉だったのに。


あたしが言ってしまったから気づいちゃった?また忘れてしまうって。




ごめんね、ごめんね散々傷つけて。


あんなに沢山忘れちゃってごめんね。


許されることじゃないはずだけど、沢山謝りたい。


それから沢山「好き」って言って抱きしめてキスしたい。



ねぇ、こんなあたしだけど会ってくれる?
こんなあたしだけど話を聞いてくれる?



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