忘愛症候群
【トモカside】
「ケン…」
「一真も愛も強いね」
「あぁ」
「私だったら耐えられないし、乗り越えられない」
「俺だってアイツみたいに強くない。だからアイツがやったみたいな行動なんて絶対できない」
雲で覆われた空を見つめるケンの表情はとても悲しいもので、私まで悲しくなる。
「ケンはさ」
「ん?」
「私が忘愛症候群になったらどうする?」
ケンには悪いけど一度でいいから聞いてみたかった。
忘れられたら耐えられないだろうからきっと「別れる」そう言ってくるんだろうとばかり思ってた。
それ以外に答えが見つからないんだから。
だけど、
「そうなったら俺は死ぬよ」
___そんな答えが返ってくるなんて思ってなかった。
予想外の答えで、思わず目を見開いた。
「な、なんで?普通別れるでしょ。残りの人生を棒に振ってまでそんなことする必要なんてないよ?」
まさか私に「別れるでしょ」て言わせるなんて。
でも、それは本心だ。
「俺にはそこまでする必要があるよ」
「なんで…」
「愛が一真を忘れたとき俺考えたんだよね」
“もしトモカが俺のことを忘れたら俺はどうするんだろうって”
ケンもそう考えたことあったんだ。
「そしたら俺の答えは1つだった」
ゴクン…と唾を飲んで、ケンが発する次の言葉を待つ。
「俺にはこの先トモカ以上の女に出会えることはない。だから俺はお前を想ったまま果てようって思ったんだ」
「……っ」
「お前以上の女なんていねぇよ。言い切れる」
「…ば、ばかじゃん」
「お前俺がどれだけお前に惚れて溺れてるか知らねぇから、んなこと言えるんだよ」
何こいつ死ぬほど恥ずかしいこと言ってるんだ。
「んなことはな」
掴まれた腕はケンの力によって引き寄せられ、そのまま県の腕の中に閉じ込められた。
ぎゅっと抱きしめられて距離がゼロになったためケンの声がより近くで聞こえる。
耳のすぐそばで彼は囁いた。
「俺の愛を知ってから言え」
【トモカside end】