忘愛症候群


その夜中、深夜1時頃ベッドに入って眠りにつこうとした時ケータイが震えた。



「こんな時間に誰よ…」



せっかくいい感じに眠れそうだったのに…と愚痴をこぼしながらディスプレイを見て速攻で電話に出た。



「もしもし」

『もしもし愛さん』



その相手はあたしの病気をよく知る先生。



『遅くにごめんね』

「いえ。でもこんな時間にどうしたんです?」



先生と連絡は割と取っていたけど、それは昼や夕方とかでこんな時間に連絡が来るのは初めてだった。



『いや…明日、ていうか今日からでしょ?教師生活1年目』

「はい。少しドキドキしています」

『そうか。ただ頑張ってと言いたかったんだ』

「そうなんですか。嬉しいです。あたし頑張りますよ」

『病気の方はどう?』

「全然なんともないです。心配しないでください、あたしには一真しかいないんだって思わされ続けるくらいトキメキがないんです」

『ははっ、愛さんを狙ってる男は大変だね』

「残念、あたしは一真が一番なので」

『そうだね…それじゃあそろそろ切るね。新人先生頑張ってください』

「ありがとうございます。それじゃあおやすみなさい」

『おやすみなさい……気を付けて』

「ん?先生、今___切れちゃった」



はたして、最後の言葉は聞き間違いだろうか?


“気を付けて”


そう言われたような気がした。

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