八木澤くんは不器用に想う
「安木さん、家まで送るよ」
「えっ、いいよいいよ!
一人で帰れるし…」
「はぐれて安木さんを一人にしやがった怜央に代わって、
今度は俺に一緒にいさせてよ」
向かい合って、両手をそっと握られる。
東雲くんが、真剣な顔するから
断れる雰囲気じゃなくて、ぎこちなく頷いた。
「じゃあ帰ろう。
荷物持つよ」
「……うん」
「そのぬいぐるみも」
持つよ、って手を出されたけど、
ううん、って首を横に振った。
「これは…大丈夫。
自分で持っていたい」
「……そう」
……なんでだろう。
八木澤くんが、私にくれたぬいぐるみだから
東雲くんが奪うわけじゃないのに、誰の手にも渡したくなかった。