八木澤くんは不器用に想う
帰り道の途中で
東雲くんの携帯から通知音が。
「怜央からだ」
帰るということだけメッセージで送って、返事を待たずに帰路についたから…もしかしてお怒りの返事?
「……八木澤くん、なにって?」
「なんか、幼なじみと会ったらしくて、
合流できる状態じゃないから、よかったって」
「……そうなんだ」
なんだ。
勝手に帰るなとか、怒ってるのかと思った。
八木澤くんは、
私より幼なじみさんといた方が、楽しいんだね。
「……東雲くん」
「ん?」
「東雲くんは……」
『自分が誰かの一番じゃないことが、嫌だなぁって思うことある?』
頭の中に浮かんだ言葉が、自分でもよくわからなくて。
そんなこと、きっと東雲くんには伝わらないと思って。
「……やっぱりなんでもないです」
その言葉を飲み込んで
八木澤くんからもらったぬいぐるみをぎゅっと抱きしめた。