八木澤くんは不器用に想う
「前髪」
「え?」
「いつもの髪型だと、
前髪切ったのよくわかる」
そう、かな?
莉乃は何も言ってなかったし、
お祭りから時間も経ってて…そんな、覚えてるものかな…?
「それ気付くの、八木澤くんくらいだよ」
「は?気付くだろ。
岡部とかに言われなかった?」
「お祭りの時も今日も、言われてないよ」
『普通気付かないって』と言いながら前髪をいじったら、
八木澤くんからものすごく視線を感じて。
「……気付いたの、俺だけ?」
「え…あー…言われたのは、八木澤くんだけだね」
「……孝弥には、言われてない?」
え?
なんで、東雲くん?
「言われてないよ。
どうして?」
「いや…アイツ、女の変化には結構すぐ気付く方だから…。
でもそっか…孝弥は気付いてなくて、俺は気付いたのか」