八木澤くんは不器用に想う



ニコッと貼り付けたような笑みを浮かべる東雲くんと


それに言い返せずに、黙って俯く女の子たち。



いつも東雲くんのまわりは賑やかなはずなのに、


……なんという重い空気。



その空気にのまれて、私も黙ってしまう。



みんなが俯いて黙ってたら、


八木澤くんがフンッと鼻で笑った。




「……彼女なわけねーじゃん。
コイツがそんな健全な付き合いするかよ」



「……そ、そうだよね〜!」




八木澤くんの言葉に、ファンの女の子たちがホッとした息をもらす。



私は、東雲くんだって健全なお付き合いくらいするだろうと思ったけど…


もし噂されてるのが、あの時一緒にいた私か莉乃だったら、彼女じゃないのはたしか。



だから『そんなことないよ』って言うことも出来なくて、また黙ってたら


東雲くんが、八木澤くんが座っている椅子の脚を蹴った。




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