八木澤くんは不器用に想う



そりゃ私だって、昔からの友達と再会したらそっちばっかりいっちゃうだろうしさ。


別に平気。こんなのすぐ慣れるよ。




「八木澤くんが柳さんといたいなら、
別にいい」



「安木さん」



「え?」



「後ろ」




東雲くんに言われて後ろを振り返ると


ジロリと私を見下ろす視線が。




「俺がいなくても平気なのかよ」



「……八木澤くん」



「……別に、そんなことわかってたから今更だけど。
スマホ忘れて取りに来ただけだから、
“花奈実のもとに戻る”わ」




やけに強調するようにそう言うから



なんかムカついて、八木澤くんを睨んだ。




「勝手にすれば。
“八木澤くんがいなくても楽しい”から」




わざとらしく言ったら、


八木澤くんが、低い声で「あっそ」って呟いて教室を出ていった。




「………」




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