八木澤くんは不器用に想う
いや。事故とかにあってないのなら、全然いい。いいんだけど…。
「八木澤、くん」
『……安木、ごめん』
「…え…」
『実は…花奈実のもとに行かないといけなくなって』
………は?
「……なんで、柳さんのところに…」
『花奈実って昔体が弱くてさ…。
今でも弱くて、倒れたりするらしくて…』
「……柳さん、倒れたの?」
『いや……倒れたわけじゃないけど、今体調悪いらしい。
今日、花奈実の両親もいないみたいで、傍にいてくれって呼ばれて…』
……なにそれ。
「……うん。わかった。
それなら、仕方ないよね」
『安木、ほんとにごめ』
八木澤くんの言葉を最後まで聞く前に、
ブツッと電話を切った。
……なにそれ。
柳さんの体が弱いとか、聞いてないし…。
倒れてないなら、大丈夫じゃん。
親がいないからって、八木澤くんが傍にいなきゃいけないなんておかしいよ。
『花奈実が来ると、学校ではあんまり一緒にいられないから。
だから、休みの日に会えばいいじゃん』
最初から、会う気なんてないんじゃん。