八木澤くんは不器用に想う
結局、八木澤くんは全然お金を受け取ってくれなくて、そのままアイスを食べた。
『金なんか気にせず味わえ』って意図の八木澤くんの鋭い視線が気になりすぎて、あんまり味しなかったよ…。
アイスを食べ終わってスマホを見たら、
もうすぐ6時を過ぎようとしていた。
「……あ、」
「どうした?」
「もうすぐ6時だから、
早く帰らなきゃ」
「は?
門限早すぎじゃね?」
「門限とかじゃないけど、
お父さん、絶対心配するから…」
「……箱入り娘かよ。
……ったく、送ってやる」
「え?」
「この時間まで付き合わせたの俺だからな。
送ってく責任があるだろ」
さっき「ったく」ってめんどくさそうに言ったくせに“責任”とか。
説得力な〜い。
でも、言ったら怒らせちゃいそうだから、黙っとこ。