八木澤くんは不器用に想う
「……約束の時間、結構過ぎてるよ」
「……あ」
はぁ、とため息を吐く、目の前の男の人。
その、揶揄っているようなのに、
どこか優しい声に、涙が出そうになった。
「……東雲くん」
「約束すっぽかされた?」
「……わかんない」
「わかんないって…」
「……来ないとは言ってないもん。
もう少ししたら来るかもしれないし」
なんて、期待するだけ無駄なのはわかってる。
わかってるけど…
本当に今日、楽しみだったんだもん…。
「怜央、柳さんとこ行ったんでしょ?」
「……東雲くんも知ってるんだ」
「さっき電話したから。
だからハッキリ言うけど、
怜央は来ないよ」