八木澤くんは不器用に想う



東雲くんが、私の隣に腰を下ろす。




「……いつまで待つつもり?」



「え……」



「怜央のこと。
来るまで待つつもりだった?」



「……そう、かも」



「……じゃあ、俺も一緒に待ってやる」



「え…っ」



「でも、雨が降り始めるまでな。
雨が降り始めたら絶対帰ること。
約束して」



「東雲くん…」




うん、と頷く。



それから雨が降り始めるまで、
東雲くんは隣で黙って私の手を握っていた。




雨が降り始めた時まで、



八木澤くんが来ることはなかった。




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