八木澤くんは不器用に想う
あ、今
『初ちゃん』って…
「東雲くん、急に名前呼んでも違和感ないね」
あはは、と笑ったら
東雲くんがジロ、と私を見下ろす。
「チャラすぎてってこと?」
「え…あー…」
そういうことなんだけど、正直に言っていいのかな?
東雲くんの様子をうかがうと、
はぁ、と軽く息を吐いた。
「うん、わかってる。そういうことだよな。
けど、初めてだから」
「……?」
「彼女じゃない女の子を名前で呼ぶの、初めてだから」
東雲くんの長い前髪の隙間から、瞳がチラッと覗く。
ちょっと伏目がちで、わずかに頬が赤い気がする。
雨に濡れて体が冷えて、熱が出ちゃった?