八木澤くんは不器用に想う
*
歩くこと数分。
家の前まで来て、ピタリと足を止めた。
「家、ここだよ」
「ふーん…(意外と近い)」
「あの…」
「なんだよ」
「送ってくれてありがとう。
それと、アイスも買ってくれてありがとう」
「……あ、べ、別に!
男ならそんくらい普通だから!」
お礼を言ったら、八木澤くんはブンッて音が聞こえそうなくらい、すごい勢いで顔を逸らした。
八木澤くんって、ちょいちょい失礼だよね。
そんな勢いよく顔逸さなくてもいいのに。
「……早く中入れば」
「うん。
八木澤くんも、気をつけて帰ってね」
玄関のドアを開けて家に入った後
完全にドアを閉めきる前に隙間から顔を覗かせて、
八木澤くんに小さく手を振ってからドアをパタンと閉めた。